新年最初の研究会は橋本敬三先生が創設され、日本国内だけでなくSotaiとして広く世界の手技療法家にしられている操体法を橋本敬三先生の曾孫でもある鈴木健介先生にご講義いただきます。
2025年7月におこなった「操体法 ー 立位の基本運動(講師 中溝誠吾)」は自己調整法(一人操体)としての操体法の側年が強かったですが、今回の研究会では操体法のもつ、もう一つの側面「手技療法としての操体法」を学びます。
【講師プロフィール】
鈴木 健介(すずき けんすけ/アミケン)
あん摩マッサージ指圧師/合同会社GX代表/アミケン指圧院 院長
1977年大阪生まれ。操体法創始者・橋本敬三のひ孫。編集者として医療・健康系メディアに携わった後、指圧の道へ。浪越学園日本指圧専門学校卒業。東京・原宿にて「アミケン指圧院 & SOTAI SALON TOKYO」を運営し、国内外への操体法普及にも取り組んでいます。
【開催概要】
・日時:2026年1月18日(日)13:00~17:00
・会場:紡指圧(相模大野)
・参加費:会員 無料
当日入会 年会費 6,000円
非会員スポット参加 500円
・定員:会場20名
・持ち物:動きやすい服装(実技あり)、手ぬぐい、筆記用具
お申し込みが必要です↓
神奈川県指圧師会 令和8年1月研究会「鈴木健介|操体法 ー 調整法」 | Peatix
https://peatix.com/event/4774902/view
操体法の正統継承と現代的革新 ― 鈴木健介氏(アミケン)の思想・技術・臨床の全貌
指圧×操体の可能性
神奈川県指圧師会は、長年にわたり指圧療法の学術的な研鑽と普及啓発に取り組んできた、歴史ある職能団体です。定例研究会では、古典的な指圧技術の継承に加えて、解剖生理学の知見や他分野の徒手療法、さらには文化的な視点からの学びも取り入れながら、多角的に探究していることが特徴です。こうした柔軟で探究心のある土壌の中で、新年という節目にふさわしい「原点回帰」と「未来志向」を両立するテーマを設定することは、会の学術的価値をさらに高めるうえで大切だと考えています。
この記事では、新年定例研究会の講師として招聘が決定している鈴木健介氏(通称:アミケン)について、経歴、思想、技術、臨床家としての特質を整理し、会員の皆さまにとって有益な学びにつながるよう分析したものです。鈴木氏は、操体法の創始者である橋本敬三医師のひ孫という稀有な背景を持ちながら、IT業界や編集者としてのキャリアを経て指圧師となった、たいへんユニークな経歴でも知られています。
現代医療における「操体法」と「指圧」の接点
現代では、患者さんの不定愁訴が複雑化し、ひとつのアプローチだけでは十分に対応しづらいケースも増えているように感じます。一般に、指圧は「圧」を用いた静的なアプローチを中心とし、身体表面から深部へ向けた垂直圧を基本とします。一方の操体法は「動」を中心とし、患者さん自身の随意運動(自分の意思で行う動き)を活用して、筋骨格系のバランスを整える方法です。両者は対立するというより、むしろ互いを補い合える関係だと考えられます。
鈴木氏は、曾祖父から受け継いだ操体法の哲学を、現代の解剖学・生理学の知識、さらにITの視点も用いながら再解釈しているとされています。こうした「温故知新」の姿勢は、伝統を大切にしつつ進化も探る本会の方向性とも重なります。特に、浪越徳治郎先生の「指圧の心」と、橋本敬三先生の「息・食・動・想」に基づく考え方は、「自然治癒力を引き出す」という目的の面で響き合う部分が多いように思われます。本報告書では、鈴木氏の活動を手がかりに、指圧師が学び直したい「身体との対話」の深層を整理していきます。
鈴木健介氏(アミケン)のこれまで
経歴:編集者から治療家へ(複線的キャリア)
鈴木健介氏は1977年、大阪生まれです。大きな特徴は、「編集者」と「治療家」という異なる領域を横断しながら歩んできた複線的キャリアにあります。多くの治療家が一本道で技術を深める一方、鈴木氏は社会で情報発信の現場を経験したうえで、施術の世界に入っています。
編集者としての視点は、臨床にも色濃く反映されているようです。編集の仕事は、膨大な情報の中から本質を見抜き、わかりやすい形に再構成して伝えることでもあります。臨床に置き換えるなら、患者さんが示す「痛み」「違和感」「動きにくさ」といった断片的な情報を丁寧に読み取り、それを「快(気持ちよさ)」という実感を伴う形で身体へフィードバックしていく営み、と捉えることもできそうです。操体法や東洋医学の概念を、現代的な言葉やビジュアルで噛み砕き、ブログやSNSで発信できる点も、編集者として培った力が大きいと考えられます。
2011年を境に、鈴木氏は医学の道を志したと語っています。そして2017年に浪越学園日本指圧専門学校へ入学し、解剖学・生理学を体系的に学んだうえで、2020年に国家資格「あん摩マッサージ指圧師」を取得しました。現在は、原宿・北参道に「アミケン指圧院」を開業し、合同会社GX代表として「SOTAI SALON TOKYO」も運営しています。
「国家資格を持つ指圧師」としての専門性と、「操体法創始者の血族」としての背景を、どのように統合して臨床や教育に活かしているのか。この点が、研究会で共有できる大きな価値になりそうです。
血脈:橋本敬三のひ孫としての正統性と革新性
鈴木氏は、操体法の創案者である医師・橋本敬三(1897-1993)のひ孫(曾孫)にあたります。操体法の「原体験」を持つ数少ない人物の一人とも言われます。
橋本敬三は西洋医学の医師でありながら、当時の医学では説明しきれない治癒現象に向き合い、民間療法や東洋医学の研究を重ねました。その中で「息・食・動・想」の調和や「快の法則」を軸に操体法を体系化したとされています。鈴木氏は、この遺産をただ権威として扱うのではなく、映像や文献などを通じて足跡を再確認し、客観的に分析しながら現代に開いていこうとしている点が特徴的です。家元的な閉鎖性に寄り過ぎず、技術としての操体法を広く共有しようとする姿勢につながっているように見えます。
また、「アミケン」という親しみやすい呼称を用いながら、IT業界で培った発信力やPRの視点と操体法を組み合わせ、現代人の感性に届く形へ整えている点も印象的です。これは、橋本敬三が晩年まで探究を止めず、臨床の事実にこだわり続けた姿勢とも重なる部分があるのかもしれません。
活動拠点と実績:SOTAI SALON TOKYO
現在、鈴木氏は東京・原宿の「アミケン指圧院 & SOTAI SALON TOKYO」を拠点に、指圧と操体法を組み合わせた施術提供のほか、一般向け・プロ向けのセミナーも開催しています。
海外(スペイン、イタリア、ポルトガル、イギリス等)への普及活動も視野に入れている点も特徴です(※4)。指圧が「SHIATSU」として国際的に認知されている現状と同様に、操体法も「SOTAI」として広がる可能性を感じさせます。言葉の違いがある中でも身体感覚を伝えていく経験は、技術の整理や伝達の工夫という意味でも、研究会の学びにつながりそうです。
思想と哲学:現代に蘇る「息食動想」と「快」の論理
「息・食・動・想」の現代的解釈
操体法の根幹にある概念が「息(呼吸)・食(飲食)・動(身体運動)・想(精神活動)」の4要素と、それを取り巻く「環(環境)」です。橋本敬三は、これらは「他人にやってもらえないこと」であり、だからこそ「自己責任」の領域だと説いたとされています。鈴木氏はこの考えを、現代の暮らし方に合わせて解釈し直し、指導に落とし込んでいるようです。
鈴木氏は、指圧師の施術は患者さん自身の治癒力を引き出すための「きっかけ」であり、健康の土台は日々の生活(息食動想)の積み重ねによって整っていく、という立場を明確にしているとされます。これは、治療家が「治してあげる」という姿勢に寄り過ぎないための、ひとつの健全な視点とも受け取れます。
「バルの戒め」:治療家と患者の精神衛生
鈴木氏が重視して伝えている教えのひとつに、橋本敬三が遺したとされる「バルの戒め」があります(※8)。末尾に「ばる」がつく言葉を戒めるもので、現代のストレス環境にも示唆が多い内容です。
・頑張るな:無理をして限界を超えない
・欲張るな:結果を焦らず、一度にすべて解決しようとしない
・威張るな:謙虚さを忘れない
・縛るな:固定観念や緊張で心身を固めすぎない
患者さんにとっては「治そうとして頑張りすぎる」ことが緊張を生み、回復を妨げる場合がある、という気づきにつながります。また治療家にとっても、「絶対に治す」という力みが感覚を鈍らせたり、刺激が過剰になったりするリスクへの注意喚起として読めそうです。本会の会員にとっても、日々の臨床での心の整え方として役立つ可能性があります。
「快の感覚」と神経生理学的な捉え方
操体法の特徴は、痛い方向や動きにくい方向へ無理に動かすのではなく、「気持ちいい方向(快方向)」へ動くことを重視する点にあります。鈴木氏もこれを「スーッと動けばよい」「気持ちよくやること」と表現し、心地よさを大切にしています。
この現象について鈴木氏は、筋緊張を調整する反射機構や、快刺激に伴う自律神経の変化など、神経生理学的な理解とも結びつけて捉えているようです。さらに、患者さん自身に「快」を探してもらうことで、固有受容感覚(関節や筋の位置・動きを感じる感覚)を高め、身体意識を育てていく点も特徴です。単なる「受け身の施術」に留まらず、身体の学び(ソマティック・エデュケーション:身体感覚を通じた学習)としての側面も見えてきます。
静と動の統合
鈴木氏の施術は、指圧の「圧」と操体の「動」を状況に応じて行き来するスタイルです。指圧で局所の緊張を整えたうえで、操体の動きを導入し、連動を回復させていく、という流れがイメージされます。
操体では、たとえば「膝倒し」「カエル足」といった基本操法を、平面的な動きだけでなく立体的な動きとして捉え直し、深層の働きや関節の質感にも触れていくような指導が行われているとされます。患部だけでなく全身のつながりで整えていく発想は、指圧臨床の幅を広げるヒントになりそうです。
【講師プロフィール】
鈴木 健介(すずき けんすけ/アミケン)
あん摩マッサージ指圧師/合同会社GX代表/アミケン指圧院 院長
1977年大阪生まれ。操体法創始者・橋本敬三のひ孫。編集者として医療・健康系メディアに携わった後、指圧の道へ。浪越学園日本指圧専門学校卒業。東京・原宿にて「アミケン指圧院 & SOTAI SALON TOKYO」を運営し、国内外への操体法普及にも取り組んでいます。
【開催概要】
・日時:2026年1月18日(日)13:00~17:00
・会場:紡指圧(相模大野)
・参加費:会員 無料
当日入会 年会費 6,000円
非会員スポット参加 500円
・定員:会場20名
・持ち物:動きやすい服装(実技あり)、手ぬぐい、筆記用具
【メッセージ】
指圧師にとって、患者さんの「動き」を見る目は大切です。操体法は、患者さん自身が「快」を感じる方向に動くことで、自然治癒力のスイッチが入りやすくなるという発想を持っています。
新年の学びはじめに、身体の声を丁寧に耳を澄ませてみませんか。皆さまのご参加を心よりお待ちしております。

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