指圧師に役立つ解剖学「大腿部の動脈」

触れた手の下にどのような構造物があるのか。
筋だけではなく、血管や神経も理解し、イメージできるようになると、より指圧施術の精度があがり、効果的になります。今回は大腿部の動脈についてみてみます。

目次

■ 下肢の動脈の概要

 下肢の動脈の根幹は外腸骨動脈です。外腸骨動脈は血管裂孔より大腿動脈となります。大腿三角部では大腿動脈は皮下の浅いところを走行しているため、脈を触れることができます。大腿動脈は膝に向かって下行するに従い大腿の深部に入り、大内転筋の停止腱に開いた孔(内転筋腱裂孔)をくぐり膝窩動脈となって大腿後側へと至ります。膝窩動脈は膝窩筋の下縁にて、前脛骨動脈と後脛骨動脈に別れて終わります。

■ 大腿前側の動脈(浅層)

指圧療法におけるポイント

  • 鼠径靭帯(上前腸骨棘 ⇄ 恥骨結節)のほぼ中央が血管裂孔に相当し、大腿動脈の拍動を感じる部位です。
  • 血管裂孔を基準として、上前腸骨棘に向かって斜め上が筋裂孔で、腸腰筋のリリースポイントです。
  • 筋裂孔のうち、内側は大腰筋、外側は腸骨筋です。
  • 反り腰(腰椎の前弯が強いタイプ)の場合は、腸腰筋をリリースするのが効果的。
  • 腸腰筋リリースは股関節と膝関節を屈曲位にして、60〜90秒の長い持続圧をすると安全にリリースできます。

■ 大腿前側の動脈(深層)

大腿動脈の走行

大腿動脈は、下肢の主要な動脈で、以下のような経路をたどります:
1. 開始部:大腿動脈は、骨盤内の外腸骨動脈が鼠径靱帯の下、血管裂孔を通過する際に名前を変えたもので、鼠径靱帯の下方で大腿三角に入ります。
2. 大腿三角:ここで大腿神経、大腿静脈とともに走行します。この三角形の区域は、大腿動脈へのアクセスが比較的容易なため、医療処置や診断において重要です。
3. 内転筋管:大腿動脈は内転筋管(別名ハンター管)を通過します。この管は、内転筋の中を通るトンネル状の構造で、動脈、静脈、および神経を保護します。
4. 膝窩動脈へ移行:内転筋管を通過した後、大腿動脈は膝後部に達し、ここで膝窩動脈と名前を変えます。膝窩動脈は、膝関節や下腿の血液供給を担います。

■ 大腿前側の動脈(最深層)

 大腿深動脈は大腿動脈の最大の枝です。大腿深動脈の枝は内側大腿回旋動脈、外側大腿回旋動脈、貫通動脈があります。内側・外側大腿回旋動脈は大腿骨頭や周囲の筋に、貫通動脈は外側広筋や屈筋群、大腿骨を栄養します。

  • 内転筋群は恥骨筋と長内転筋が浅層にあり、大内転筋は内転筋群の床として深層に大きくひろがっています。
  • 大腿動脈は長内転筋の前ところを下行するのに対し、大腿深動脈は長内転筋の後、大内転筋との間を下行します。

■ 殿部・大腿後側の神経・動脈

大腿動脈は内転筋腱裂孔を通過し膝窩動脈となり、大腿の後側に至ります。

  • 坐骨神経は膝窩の上で脛骨神経と総腓骨神経に分かれる
  • 膝窩動脈は膝窩の下、ヒラメ筋線の高さで前脛骨動脈と後脛骨動脈に分かれる。

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