神奈川県指圧師会 定例研究会 12月15日
「指圧施術にあたっての三原則」佐々木重雄先生
日時:令和6年12月15日(日)午後1時〜5時
場所:中原市民館(武蔵小杉)
神奈川県川崎市中原区新丸子東3丁目1100番地12
パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー1・2階
※ 要申し込み
講義資料の印刷がありますので、参加人数の把握が必要です。
中原市民館はあまり広くないので、積極的なSNS告知は今回しません。
長年の指圧臨床で多くの方の病を癒してきたベテランの佐々木先生の貴重な講義ですので、学生さんもぜひご参加ください。
当日は今年最後の研究会ですので、望年会も行ないます。
申込み時に望年会の出欠についてもご回答おねがいいたします。
神奈川県指圧師会 12月15日「指圧施術にあたっての三原則」佐々木重雄先生 | Peatix
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指圧療法(手技療術)の手法分類について
ここでは指圧にこだわるというより幅広い意味を含めて述べることにした。それは、指圧はただ圧すことだけを目的としていると思われていやしないかという事もあるからです。
治療に当たっては、勿論正しく診察(診断)が行われることが最重要課題であるわけです。それは、次に治療目的がはっきり定まり、実施されることになるからです。
この目的と同時に実施されるであろう手技が指圧操作法(指圧操作法の三原則)なのか、運動操作法(ストレッチ)なのか、治療というより健康維持的(ラジオ体操的、ヨガ健康法的)の技術でいいのかは、被験者(患者)の精神面や毎日の食生活面などなども考慮して実施されなければならないのです。(患者自身の回復力に合わせることが重要なのです)。
指圧というものは親指で圧すものと思いがちでありますが、親指だけではなく、人差し指と中指の2本指圧や薬指も含めた3本指圧、小指も含めた4本指圧、母指球圧、小指球圧、手掌圧、手根部圧と、どこでも千変万化の治療になりうるものです。
更に、形としては見えない心のこもった「真情」指圧法が行われることが何より重要なことです。
身体にはジョイント部分(解剖学的には関節を指す)があり、必ず凹部があれば凸部もあるのです。若い時代は少々の変位姿勢で仕事をしても、復元する体力があり、直ぐ回復出来るしなやかさや回復力が備わっているので、苦しさを感じる前に回復しているのです。個人差は多少ありますが、年を重ねてくるとこの凹み部分や凸部分の弾力が失われ変形が始まり、痛みが伴う事もあるのです。こうなる前に適度な運動を行い、自己指圧治療の時に、手指や手のひらをうまく使い分けることです。
大工さんの道具の一つに鑿という道具があります。この道具だけでも何十種類とあるわけで、それをどのように使いこなすことが出来るかで、仕事のはかどりや出来映えがちがってくるのでしょう。あえて手技療術の分類としたのはこれらの意味を理解して頂くために指圧の分類としなかったのです。手技療術いわゆる押圧操作法や運動操作法という言葉はいつ誰が定めたという事もなく使われて来たようでありますが、私たち指圧師の間では押圧法とか指圧法と言い、また、運動法と云っていることが慣例になっているところです。
そこで、この指圧法には、第1に垂直圧法の原則・第2に持続圧法の原則・第3に集中圧法の原則と指圧の三原則と言う法則があって常に正しく厳守していただかねばなりませんが、手指の使い方や姿勢が乱れても、この三原則は崩れることになるからして、正しい姿勢、正しい姿勢と必要以上に言うのです。
この三原則は実に大切な事であって、もしこの三原則を逸脱した施術の仕方をすると指圧の効果は半減するだけではなく、指圧療法としての価値を傷つけることになるわけです。換言すればこの三原則は指圧療法の生命ということです。
2011-2
(8)指圧治療にあたっての三原則
(1) 第一の原則 「垂直圧法の原則」
指圧の三原則の一つは「垂直圧法の原則」です。
「人間の身体体表は、種々複雑な曲線や曲面の複合体であり、この体表の曲線や曲面に対し、最も効率よく効果的な指圧刺激の適合圧を与えるには、常に(曲線や曲面に対し)垂直圧法を以て行うと、力学的にも無駄はなく、従って、「垂直圧法」は指圧法における力学的指圧刺激の最も重要な基礎となるものです。」
この原則は身体中のどこの凹凸部位を指圧する場合でも、指圧すべき患部面に対して真垂直に指圧することをいうのです。
三原則の中で第一原則として必要とするのは、通常圧法は3秒から5秒間ぐらいの漸増漸減圧【圧感・力感】次第に圧を増圧し、次第に圧を減圧すること】を行う中で、患部に軽く触れ、触れてから次の動作が自然に流れ移動垂直圧(この時に局部、又は全身に圧が十分伝導(つたわる)ように行い、圧反射の条件が整うことが重要です。)になるのはこの原則として最も重要だということです。
なぜ第一に挙げるか、それは指圧点という部位に適合圧【圧感・力感】としての漸増漸減圧刺激【これを、啐啄同時圧と言い=圧感・力感の適合圧を云う】を行うことにより圧反射の原理が働き、やがて指圧部位の緊張あるいは凝りが弛緩むからです。
そういう意味ではどこでも滅茶苦茶に指圧して治るということはないからです。
原理原則にもとづいた指圧法を行うことで奏効した、又は、どこをどの程度、正確に優れた指圧技術で治療が行われたかということによって、回復することが出来たという結果がついてくるからです。
この一ポイント、一ポイントの指圧点を連続で行うことにより経絡の点(経穴ポイント)が線(経絡)になるのです。そして縦横無尽の経絡線上の経筋(筋肉走行)を確実な方法で指圧法を行うのです。これらの行いが理論上、また物理学上からも力学的に極自然に働く事が望ましいわけです。経験の少ない方が一見すると指圧点から次の指圧点に流れる(移動する)動作を垂直圧法と違うように映るかも知れないが、流れている時は圧(力の働き)が入っているわけではありません。つまり垂直圧法による指圧連動作を連続で行うことで流れているのであります。
(ただ、この時に自然に行われているように映る指圧連動作の時、指圧による加圧が十分に行われる時に頂点に達していることが重要【この時が持続圧の第2の原則が働いている】なのです。その後は移動とともに圧を抜く状態【患者さんの呼吸に合わせて行う事です。吸うときに圧を抜く・吐く時に加圧することになります】になるという事です。【これは標準圧(通常圧法)の時も、持続圧の時でも、【漸増漸減圧】が自然に行われていることになります。)
指圧による加圧、その行為が自然に力学的に働き、常に患部面に対しては垂直圧法が行われているというわけです。従って流れているように映る、あるいは揉んでいるようにも映る、複雑な指圧連動作は常に面(押圧の体幹)に対して垂直圧法を行っているに過ぎないということですが、この指圧動作は理論上、物理学的刺激の基礎になっているということです。
そのために、一生懸命指圧技術を習得しようと焦り苦労し努力するものです。
私も、初心者の頃、浪越徳治郎先生に「佐々木君指圧してくれ」、とよく云われることがありました。周りの人たちは、皆、私は学生ですとか、まだここしか習っていませんとか、習ったように3点3回とか、5点3回と几帳面に指圧すると、もうサッサと終わってしまうのです。
私は何点何回にこだわることは一度もしなかったのです。それは浪越先生も指圧歴50年(当時)という職業的身体だからです。
だから3点3回で素通りされたら物足りないと感じるに違いないと思い、凝っている1点圧に集中し、垂直、持続圧を繰り返し行ったのです。(身体中年季が入っているのです)
まだ垂直圧とか持続圧とか聞いたことも習ったこともない状況の中で行った指圧に対して、佐々木君は何年働いていたのかと聞くのです。
私はそこで初めて家庭指圧を習得しようと学んでいるところですと答えました。すると先生は、おーそうか物腰もいいし、物覚えもいいから頑張ってくれ。又、まだ習ってもいない腹部指圧は浪越先生が私の手を握って先生自身のお腹を指圧させるのです。(当然ですが私の腕は腹部に対して垂直圧でした「目的の押圧部位」、両立ち膝姿勢での指圧です)。
握られた手は離すことなくお腹だけ2時間も行うのです。手の方より足の方がしびれてくるので、浪越先生に気付かれないように体勢を変えながら行ったものです・・・。
私はその後入学し、そこで初めて指圧の三原則を学んだのであります。だから私の場合は実際(実技)が先で理論は後だったということになります。
このことからして前述しているように、高い知識のある人程上達が早いと思われがちでありますが、必ずしもそうではない事がご理解頂けたと思います。(素人の方が素直に取り組めることもあるということです)。
いづれにしても、屁理屈を云っているより、この第一原則を早く習熟する事が最も重要だと考えます。先輩や先生方の技術指導は形式または、ヒントとなるよう教え得るだけのことであって、結局最終的な技術の真価は自分の「やる気」「その気」「研究心」「体験」の積み重ねによって得られるものであるからです。(この部位は、このように指圧すると教わっても、手に感じる感覚や主観性には個人差があるからです)。
最近はすぐ結果を求める時代になった為だろうか、何年も経って体調を崩したにも関わらず、倍の料金を払うから1回で治してくれませんかという方が結構いるものです。
また、習う側も佐々木さん、浪越徳治郎先生が胆石痛で苦しんでいたのを治したそうだけど、どこを指圧すれば胆石が排出するのですか、腎臓結石の時はどこを指圧すれば排出するのですか、と一ポイント押したら立ち所に治るところを教えて下さいというわけです。
圧反射、内臓体壁反射というものは、確かに初期段階の場合は、ここ、そこという苦しみ、痛みのポイントはあるものです。
しかし、少し時間がたつにつれ、アッそこも、アッそこもといった具合に関連痛となって放散されるので、結局1ポイントで治るという事はなく、大体どこがどうという痛みの場合でもなるべくは全身指圧をすることが大切です。ただ、有効性・即効性が求められる場合がありますので、その時の状態や状況に即応して、部位、程度、順序などはいつでも行えるよう身につけておくことが最も大切で、その即応能力の適、不適が奏効に大いに関係するものです。
そこで何回も申しあげていますが、指の感覚を常に修錬して「超診気」(聴診器)のように鋭敏に研ぎ閾まされ、指に目が付いているかと思われるぐらいの働きが出来るようにならなければならないのです。このように技術的な事は、習うより慣れの例え通り、自分の身体で痛さや気持ちの加減を検討するのが、感覚を身につけるのに一番手っ取り早い方法であると考えます。
自分の身体なら自分の今日の調子はどうか?食欲のない時はどうか?働き過ぎた時の身体の凝りはどうかなど、自分が一番知っているわけですからね。
それを十分識別できるようになったら、今度は他人の身体について練習をするのです。
このように半健康状態の身体の緊張や凝りが判別できるようになったら、次にはいろいろの病的状態の身体や患部の識別が出来るよう訓練づけて行くことが大切だと思います。
この順序立てた練習、訓練を繰り返し仲間同士で行い、いつでも、どこでもどのような病状の方にも対応できるように手指の技術感覚のみならず、精神状態も常に平静を保てるよう心がけていなければならなないのです。
(第三の原則である集中圧の文書中に、私の体験した集中圧をしなければならない状況の事が書かれた参考文があります。)
第一の原則の注意点
1 指圧を施術するにあたり、押圧部に軽く柔らかく手指を触れるように当て、次に真直ぐに押圧しても大丈夫か呼吸などの様子を見て、しかる後に徐々に押圧を加えるようにすること。このことを漸増漸減圧【次第に圧を増圧し、次第に圧を減圧すること】といっております。(1ポイントの押圧を3~5秒間の漸増漸減圧を行うことです。)その動作が慣れてくると、自然に次の指圧ポイントにいつの間にか移動し、すらすらと流れるように指圧しては移動、指圧しては次のポイントにと移動出来るようになるので、そのようにできるように練習を繰り返すことです。(しかし、押圧部位に異常を察知した時には、次に進むことなく、すぐに対応できるようでなければなりません)。
2 垂直に押圧出来たかどうかは被験者(相手)に聞いてみることです。そこで次のポイントに流れ移動して、また垂直圧法を行うのですが、慣れるまでは被験者(相手)の感覚としては親指による押圧より、支え側である4指の方に圧が入っていることが分かるのです。それは術者の体重移動圧ではなく、腕力だけで押圧すると、押圧部は気持ちがいいと感じるのでは無く、痛く苦しい感じがするものです。
(次のポイントへ移動の時は肘の力を抜くことです。)
3 押圧する時に手掌圧や母指圧のとき、或は親指の重ね圧を行う時、下側の親指に圧がかかる方がいいのです。(局部によっては術者の都合で決めてもよい)。
練習の要領(練習の部位は背部がいいでしょう)
背中は少し丸みがあるので押圧角度が斜めにならないように、手掌は押圧部位に軽く軟らかに触れ(この時点では、まだ加圧はかかっておりません)、押圧部に体重移動しながら加圧が頂点に達した時に、患部面に垂直になることが重要です。(この時に垂直圧になっていれば肘が自然に伸びているものですし、押圧する時に腕の力で押圧すると、肘が曲がり、圧が流れてしまうからです。)
そのまま、体重を腕とゆっくり移動する要領で行い、1カ所が終わったら手指を移動し、次のポイントでまた垂直圧法を行うとゆう要領で行うのです。この要領で次の押圧部へ順次に流れ移動が出来ればいいのです。
(2)第二の原則 「持続圧法の原則」
指圧の三原則の二つ目は「持続圧法の原則」です。
「人間の体表の複雑な曲線や曲面に対し、最も効率よく効果的、適合的圧を一定程度押圧し、その圧を緩めることなく、更に一定時間持続押圧法を行う方法です。通常圧法は3秒から5秒間程度、標準押圧の漸増漸減圧【次第に圧を増圧し、次第に圧を減圧すること】です。
持続圧法は症状にもよりますが、5秒から10秒間、又は、10秒から15秒間程度(麻痺状態の時には20~40秒間ぐらいの押圧法もあります)の持続圧法を施術中、手指に感じる感覚や経験的本能の直感、又は、施術にあたり患者の反射反応を念頭において、指圧刺激を力学的に持続押圧するものです。しかし、持続圧法の長短や圧法は症状により多少は異なるものです。」
押圧の過程は、まず押圧部に軽く柔らかく触れるのです。続いて所要の圧を徐々に加圧押圧したらすぐに離すのではなく、押圧をしたまま持続圧法で5秒から10秒間くらい留め置き、徐々に圧を抜く(離す)ことです。この5秒から10秒間くらい留め置くという事が第2原則の「持続圧法の原則」です。【これらは必ず患者さんの呼吸に合わせることです】
従ってチョコチョコと急いで押圧したのでは圧反射の原則が働かず奏効を望まれることはないでしょう。
この押圧の持続圧時間は、部位別症状や場合によって長短を考えなければなりません。従って何ら特別な症状の考慮が必要とされない場合は3秒から5秒間、又は10秒間くらいの持続圧後、徐々に離す(圧を抜く)ように行うのが標準的な持続圧法といえます。
症状によっては、10秒から20秒間、又は、鈍くなっている部位や麻痺状態の時には、20秒から30秒間ぐらいの持続押圧を何回か行なって、今度はいったん別の部位を施術押圧して、また原に戻って押圧してみると症状がかなり改善されていることがあるものです。・・・
だから、痛みを感じないからと言って同じ部位をいつまでも押圧するのではなく、流れとして進み、また原に戻って持続押圧してみると、筋肉の弾力が蘇り回復期に向かっていることが分かるものです。又、症状によっては一度では無理なことがありますから、次回に、また次回にと言った具合に、何回かで解決することも重要なことです。
【衰弱者に対しては指圧治療による反応が強すぎてはいけないからです。】
これで第2原則の持続圧法の重要性が解って頂けたと思いますが、なぜ留め置かなければならないか、それは最初にも述べたとおり、指圧療法は押圧の力学的働きを部位に重んじ、同時に押圧の程度(持続圧)と言う事も非常に重要視するからなのです。
押圧部位がずれ、程度(持続圧)が足りなければ奏効しないかもしれない、また逆に過度の押圧は弊害になるかもしれないのです。従って押圧と押圧を進めている間に、筋の緩みを細かに感じ取る事が出来るようにならなければならないのです。また、それを感じ取れなかった場合は一回一回、押圧の結果を相手に良く確認する必要があるのです。
この確認こそが判断であり、その一つ一つの判断の必要上、押圧しては止め置いて徐々に離す(抜く)というような施術を行なえるようになることです。
チョコチョコの押圧では反射の原理が働かないので筋の緩みを判断する事が出来ないからです。
つまり、押圧刺激が生理学上からも持続圧法を行うことによって筋肉に反射の原理が働き、その指圧刺激効果(反射反応)が直ちに起こる場合と、ひと時の時間をおいて反応が開始される場合とあるからなのです。(この反射反応の顕れることを動じるといい、症状が回復に向かって動き出すことを言います。)
これらは、単純疲労の場合は直ちに反応がみられ、筋の緊張または凝りが緩むのです。
一方、筋の断裂、神経の鈍麻や麻痺などの場合は経絡や神経刺激の響きが鈍く、反応も鈍いのです。このことを生理学では刺激に対する潜伏期といっているのです。
つまり、症状が軽ければ標準持続圧で十分反応があるので指圧施術後に楽になった、軽くなった、痛みが感じなくなったと感謝されるのですが、潜伏期症状のある時には反応が鈍いので、いくらか軽くなったかなぁぐらいの反応なのです。
この反応は刺激の程度によって大小の差はあるもので、要するに徐々に縮んで、ある程度まで至るとまた徐々に筋の攣縮によってもと通りに伸びるのです。これで反応が終わったわけではなく、もう一度小さく縮んでは後攣縮振動によってもと通りに緩み、伸びることになるのです。
これは筋肉に指圧刺激を与えると潜伏期・攣縮・後攣縮振動という経過を辿るわけです。
これらの指圧刺激にはそれに応じた反応があるということになるのです。その反射反応は指で感じる場合と、鈍くてなかなか感じない場合があるのです。この鈍い感じも指圧技術を熟練すればするほど、どの程度の回復がなされているか判るようになるものです。
だからチョコチョコ押しは、なんの反応をみないまま終わっていますから回復は見込めないし、感謝の言葉を頂くこともないのです。だからと言って強圧を越える過重圧をしてしまうと、過重刺激によって筋肉の疲労ということもあるから注意することです。
またチョコ、チョコ押しで2時間ぐらい行っても筋肉は疲労に変わり筋硬直に変わるので同じく注意されたいものです。
第1原則でも述べているように、私たち、指圧技術の実力を身につけるという事は切実な問題です。当初は何が何だか分からなくても、その1つ1つの症状を判断できるよう被験者(相手)に聞きながら練習する事によって指の感覚が日増しに発達して、判断力は徐々に培われて行くものです。指に目をつけるにはこうした努力の積み重ねによって培っていくものです。そこで症状別によっての施術については、回復しないからと言って焦ることは禁物ですし、初診時に判断がつくような症状であればいいわけですが、2~3回の施術で回復する見込みがないと思われる場合は検査を勧めることも必要です。
従って、第2原則も是が非でも正確に守って実施して頂きたいものです。
第二の原則の注意点
1 第1原則に次いで、第2原則の大切さを知るために次の練習を行ってみるとわかりやすいと思います。背部を同じ圧でチョコ、チョコ押しと、第2原則による1押し5秒間、又は10秒間ぐらいの静止持続圧法を比較してみると一目瞭然なのです。
2 標準圧の1押し3秒から5秒間という感覚を早く覚えてもらいたいものです。また凝りや症状によっては10秒から20秒間、又は30秒間の静止持続圧を行う事もあるのでこれらの押圧の仕方も覚えてもらいたいと思います。(チョコチョコ押しは禁物です)
3 このように持続圧の押圧練習をしてみると、大体1呼吸に1回押圧するということに
なるのです。呼吸の要領は息を吸い込んでおいて、だんだん押圧していく間に息を吐いてもらい、加圧押圧(持続)している間に息を吐ききることになります。
次の押圧に向けて呼気をなすという訓練を身につけることが大切なのです。
(この呼吸法は術者も被験者(相手)も同じ要領で行うことです。被験者が苦しい、痛いと感じた時は、身体に力が入っているものです。従って相手の呼吸が止まってしまうので凝りは緩むことはないのです。息を吐いた時に初めて緩むのですから注意することです。)【特に硬く凝っている部位は、意識させて呼吸を吸わせ、吐く瞬間から加圧を加え始めるのです。呼吸が吐き終わる頃には、圧を抜く動作になるのです。
練習の要領(練習部位は背部がいいでしょう。
押圧部位に軽く、柔らかく触れる、続いてあまり痛くない程度に押圧し、その圧加減で3~5秒間ほど静止持続圧を行い(漸増漸減圧法で行うことです)、徐々に離す(圧を抜く)ことです。慣れてきたら同じ要領で10~20秒間の持続押圧も行ってみることです。
(3)第三の原則 「集中圧法の原則」
指圧の三原則の三つ目は「集中圧法の原則」です。
「一点、一点、または一部位、一部位への触診、診察にあたり全意識を集中して行うことです。ただ、この三原則の時だけ意識を集中して行うわけではなく、指圧押圧中は、常に意識を集中しているのですが、初診時は更に集中力を高めて診察をする意味です。」
集中圧法とは、特に難病や重症患者の場合、個人差はありますが、蘇生力(回復力)や生気の低下は、筋力の低下とともに意思の持ち方まで変えてしまうほどです。
重症患者のその病に伏している状況、状態を指圧施術によって回復まで圧し進めることは並大抵の努力や執念だけでは蘇ることは困難だと思います。
病弱な患者の身体患部、又は推移する症状に対しての指圧施術中、常に意識(精神又は心)を集中し、あらゆる指圧技術を結集した適合的圧【圧感・力感=啐啄同時圧】を行うことで症状が動じる(回復に向かう)ことを期待するものです。
又、術者の技術と意思統一(精神)は原より、患者、家族との意思が一致したときは、測り知れないほどの生命力が沸き出て(蘇生力)、症状が動じ(生気)医師も驚くほど回復することがあるのも事実です。
【術者の意識(精神又は心)を高め、さらに高度なテクニック指圧の集中圧法を行うことで、患者さんは死の淵から生還(蘇る)することがあるからです】。そう言う意味で指圧療法にとっては、特にこの第三原則は生命線でもあり、「精神を集中させ」、指に目のついた手指を持って患部と思われる部位、又は推移する症状や凝り、及び緊張などを看過することなく探り当て(触診)なければならないのです。解りやすく言えば診断です。
正しく診断出来れば、それに即応して適合する指圧治療が行なわれるのです。この事を【啐啄同時(そったくどうじ)・卵からヒナが孵る時、ヒナが内側から殻を破ろうとし、親鳥も外側から同時に殻を破ることを意味します。要するに患部や症状が求めた適合圧ができることです。】の診断即治療と言うのです。押圧中に話をしたり、考え事をしたりしていては正しい診断が出来ないから、施術をする部位に触れたら、離すまでの間は全精神力をそこに集中して、この凝り、又は緊張はただ単なるコリなのか、又は病的を意味するコリなのかなどに対してどの程度の押圧をするか、又は押圧をしてはいけない状態なのかという判断もしなければならないのです。そう言う意味では体に触れるという触診は、以前は医師も必ず触診をしていたもので、触診は基本中の基本であると私は思うからです。
医学者をはじめ、多くの人たちは指圧療法をただ単なる物理療法の一種で力による刺激療法と思っているようでありますが、指圧師としては、単なる物理療法とか、単なる刺激療法と思ってもらいたくないものです。それはこの第三原則による手掌や指先で診断、および治療が出来。これは精神の集中・経験本能の直感が科学で解明できない天地のエネルギーを戴き発揮される事があるからです。この第三原則を形態以上の形態と認め検定の及ばない実質とみるべきです。それは理屈はともかくとして、実例を話してみましよう。
第一、第二原則がよく出来て、どう見ても欠陥がないように見えても、この第三原則が発揮されなければ必ずしも指圧の効果が上がるとは限らないのです。それはまだ指圧療法を覚えたばかりで慣れていない素人でも、病人が血縁者だった場合に、技術は下手でも心は真剣なのです。そのため普段では考えられないほどの力(効果)が及んで、驚ほど回復する事があるものです。少しでも良くしたい、何としてもこの痛みを和らげたいという情熱というか、愛情(指圧界では母心)を込めて施術することで技術をはるかに超越させることになるのです。
このような事を何度も見てきているので、私も指導に当たっては、技術の向上は当り前のことでありますが、目の前で苦しんでいる方を手当てする時、自分の両親や兄弟だと思い、一段と愛情を傾注して施術する事が最も大切なことです。と教えています。
それは少し慣れてくると、ややもすれば職業的、または事務的「魂の抜け殻的」な施術になることがしばしば見られるからです。こうして見ると、この第三原則の重要性は歴然としてくるわけです。ただ、いずれの場合においても情熱があればいいというわけではなく、普段から冷静に平常心を持ってあたることです。それは情熱が過ぎて失敗も否めないことがあるからです。(術者と患者さんが一心同体で、しかも一心不乱での押圧を行う意味で、一つの事に集中し、しかも他の物事に心を乱すことなく行っている様です)。
どちらにしても精神状態が安泰であれば、すべてうまくいくというわけではないのがこの療術(第三原則)を難しくしている所以なのです。
そこで、いつでも初心に帰るという気持ちが大切で、全精神力を傾注し、充分に注意して行うという事から始め、自然の体験の結果として、納得して行う方針を選んで貰いたいものです。そしていつも術者自身が平常心でいられるという、精神修養も出来れば時々でもいいから行うことも必要です。
私は50年、指圧治療を行っているので、指圧施術を行う前に症状をよく聞き(難病や重症度の高い症状の時ほど)、既往歴、家族歴など、(どんな些細なことでも聞くことです)確認して患部または腹部などに触れて診るのです。この触れる瞬間の心境が一番緊張する瞬間でもあるわけです。そして、この手の掌、指先に伝わる啐啄同時診断、或は、診断即治療ともいうことでしょうか、私の手掌と受診者の体表は真に表裏一体というのでしょうか、無風状態と表現すればいいのでしょうか、異常があれば鏡に影像しだされたように感じるのです。この感じた判断によって施術の始まりです。指先に全精神力(形では見えない心、「霊、たま」)を傾注、このとき指先に目がついていて影像が鏡にうつり、その症状が指先に感じ取れるようになることです。そして、その感触によって徐々に押圧が加わり、ある程度に達し、その部位がこれでよしと訴えるところで押圧が止まります。そしてそのまま留め置く。留め置いていると、もういいと部位が再び訴えてきますので、その時点で徐々に押圧を緩めるのです。この方法の施術を何回行うべきかなども感じ取ることです。こうして施術を行っている間に手指が予想した通り、筋肉の硬結が緩んで回復に向かってくれたら最高でしょう。
何れにしても、事務的な押圧や簡単に考えたり、余り焦ったりする気持ちを捨てて、根気を失うことなく徐々に熟練するように努力することが一番よいでしょう。
第三の原則の注意点
- 第一、第二原則を正確に守りつつ、軽く、軟らかく当てて真直ぐに押圧し、そこでしばらく留め置き徐々に離す(圧を抜く)。このすべての動作中、心の動揺を持ってはならないし、正確に押圧できる意識(集中)をもって練習をすることです。
- 呼吸の仕方は第二原則の注意で述べた通りで、どこを押圧する場合でもこの呼吸法で行うように練習をすることです。
- 手指を当てて押圧するのでありますが、腕の力ではなく自分の体重の移動を十分利用することが大切です。それには押圧の位置や姿勢、または体勢もこれに適合するように自然に流れ移動ができるようになることです。
- 先は、快圧程度で上から下まで平均的なリズムでの押圧が求められ、上達に従って持続圧や強圧・または強化圧(患部が必要としている場合)などの練習も行っていく必要があるのです。
- これらの練習を反復し、もし思い通りにゆかない時にはいつでも中止し、また正確に行えるように練習することです。
- 触れる部位の解剖学上または生理学上すべて知り得ていなければならないのです。書物による系統解剖学も大切でありますが、出来る限り人体解剖の勉学にもつと励む事も大切です。私自身は患者様の症状を疑問に感じた時はその部位をしっかり確認するよう解剖見学したものです。
例えば、頚部動・静脈、神経、副甲状腺や甲状腺、気管、食道など、胸部内臓、腹部内臓、動・静脈、神経経路など実物に優ることはないと思うので機会あるごとにしっかりと学ぶことが大切です。このことを頭に入れて置けば何が、どこが異常であるかということが手に伝わってくるものです。(私の場合幼少の頃、父が猟師をしていたこともあり、キジ・タヌキやテン・ウサギや熊・飼育している鶏やウサギ・ヤギなどの解体を何度も見ているので、人間とは違っていても、内臓や血管などは皆同じですからね。だから今にしてみれば随分と勉強になったと思っています。また、助産師さんには、乳のもみかた・按腹のしかた・逆子の治し方などを学んだものです。何が何だか分からない状態でしたが、患者さんに直面すると思い出して出来るものです。だから、患者さんに直面したら、この臓器は異常ない、又はこの緊張感又は塊は何だろう?何か変だと感じ取れるよう精神の集中と熟練した手指(目のついた状態)を作り出す必要があるのです。
「指頭に心眼を開く」ことで正しい診察が出来、それに対する正しい啐啄同時の指圧適合圧術【圧感・力感】が出来るようになるからです。
意識の無い「肺炎患者」さん=指圧治療による治験例
日本大学付属板橋病院
何時もお出でになっている患者さんの義理の母親89歳です。
いつも身体の手入れに来ている方の義理の母が肺炎で入院、手足の指などを指圧するだけでも効果がありますから実行してみてください。とアドバイスしました。
翌週、なかなかうまくできません。先生、多忙でしょうが、病院へ来て診てくれませんか。
病院の先生は、もう効く薬がありませんので、何をされてもいいです。と言っておりますから、お願いします。というわけで翌日病院へ伺ってみました。
病室へ入る前に、手洗い、うがい、手指の消毒を済ませ、ナースセンターへ。
ちょうどそこへ、ナースセンター前の病室から医師、ご主人さんと奥様も出てきました。
佐々木先生、多忙のところありがとうございます。今、医師からお話があるというので、ちょっとお話を伺ってきますのでお願いします。
私は、看護師さんから説明を受け病室へ、(看護師さんからの説明では、血圧は最大60~最低は0に等しい、体温34,5度。)(患者さんは仰臥で寝ています。)
私の触診では腕の脈は感じ取れません。そこで頸部、腹部の触診でかすかに感じ取れます。手足は冷たく冷えきっているというより、血液の流れが感じられないのです。
胸の辺りを触診してみると、【このような時にこそ、精神を集中させることで、どう行えば効果が得られるかという判断がつくのです。之も経験の積み重ねです。】どうやら左側の肺の働きが変だ【肺の機能低下・こちら側が病んでいるという意味です】と感じ取れたのです。そこで背部、左側の肩甲骨間部へ両手を入れ、両四指を立てる指圧を繰り返し行う。何回か行なっていると、少しずつむせ返る様子が出てきました。まもなくむせかえりが強くなり、咳き込んで痰が出始めました。最初は白い痰、次第に黄色、そのうち茶褐色です。茶褐色の塊があり、吸引器でもなかなか取れないときがあります。それでもその都度,看護師さんが吸引器をうまく使いわけ何度も吸引します。茶褐色の塊の痰が何回か取れてからは、熱は上がり36度、【普通は高熱があり、指圧を行うことで下がるものです】血圧は126~60ミリhgになり、目を覚ました患者さん曰く、私,死んでいましたの?
看護師さん、いえ、すやすや寝ていましたよと、励ます。
そんな騒ぎをしているところへ、先ほどの医師と家族が帰ってきました。
(看護師が、医師に患者さんの意識が戻り、気が付きました。との報告をしたからです)。
医師は、目にライトを照らし、体温を測り、血圧を測定してびっくりしています。60ミリhgしかなかったのが、126ミリhg~60ミリhgになったからです。
翌日、翌々日と続けて行った結果、食欲は出て、体温、血圧とも良好、明日からリハビリが始まるというのです。結局、6~7回の往診で回復して退院しました。
医師の説明では、無理ですからあきらめてくださいとお話しされたそうです。それが元気になったので医師も、家族もびっくりしたのです。肺炎で、医師から効く薬はありませんと言われて、元気になった患者さんは他にも何人かおりますよ。・・・
本人は、毎日来てくださいと催促するのです。又、家族からは感謝、感謝のお礼です。
看護師さんも、ただ、吸引器で吸引しても奥にある痰は取れませんが、指圧施術をした後は、患者さんがむせ返るので奥から痰が出てくるのですね!!しかも茶褐色の痰が取れた後は血圧も、体温も正常になり全然違いましたね、と驚いています。
(茶褐色の痰は、肺炎球菌の塊でしょうか。以前に行った患者さんは、高熱だったのが指圧を行うことで、痰が次々に吸引器で取れ平熱になりました。又、寝てばかりいると、筋力が低下して誤嚥することが多く、肺炎になる可能性も多くなるのです。)
東京慈恵会医科大学病院の医師からの要請(約40年前のことです)
「肝臓がん末期」男性の患者さんの緩和指圧を依頼される。
「肝臓がんの末期患者」男性です。当時の抗がん剤は、現在の抗がん剤のように、一つ一つの症状に対して当てはまるように、きめ細かな抗がん剤ではなかったからです。
だから治すというよりは最終的には痛みを緩和するためにモルヒネを使ったのです。使い続けているとそのモルヒネの効果は短く、患者さんは痛みに耐えられなくなり、暴れるので患者さんの手足を縛ったのです。家族にしてみたら、その様子が耐えられなくなり、医師に指圧ではどうでしょうかと訴えたことがきっかけです。
医師からの要請で、私も協力できればとお願いし、実現したのです。
医師に病室を案内され、手足を縛られていた患者さんを診て、最初はどこから手を付けようかと考えました。まずは肝臓がんだと聞いていたので、腹部肝臓部に触診(手当)をしてみたところ、もう「がん細胞と腹水」(腹水の奥にはがん細胞が、ぎっしりです)でお腹はパン・パンに膨らんでいて、いかにも苦しそうです。
身体全体の様子を確認して、先ずは右足首の紐をほどいて、足首や足の甲辺りを軽めに指圧して、足首をぐるぐる外回し、内回しを繰り返し、繰り返し行い、今度は指先を1本1本ぐるぐる外回し、内回しを繰り返し、繰り返し行い、最後に指の指圧を繰りかえす。
そのあと足の付け根から足全体を指圧して、膝関節を上下に緩める運動をしてみました。
続いて脛から足首、足の甲、足底と軟らかい指圧を繰り返し行い、少し足を何回か上下運動をしてみる。(指圧の後、足首を紐で結ぶことはありません。これを今度は反対の下肢も同じように行いました。下肢は全体的にむくんでいます。特に膝関節や足首の関節部、足の甲部などは押圧すると、皮膚から水液が出てきそうな感じぐらいのむくみです)。
(右側上肢を行う時も、先ず手首の紐をほどいてから)右側肩部から上腕、前腕と全体的に、軽めの指圧を行い、肘関節や手首の関節の運動法も、軽く何回か行ない手の甲もむくんでいます。
(指圧の後は手首も紐で結ぶことはありません。反対側の上肢も同じように行いました)。
患者さんは仰臥で休んでいますので、敷き布団と背部の間に両手掌を上にして差し入れ、四本の指を立てると患者さんの身体が少し浮きあがるようになるのです。それを左肩甲骨側から順に背中、腰辺りへと下がっていくのです。又、肩甲骨辺りまで戻り、腰の辺りまで下がっていくのです。
これを患者さんの右側から行うので、左側の背部を先に終え、今度は右側を2回ほど行ってみました。自分では動けないからでしょう、背部を動かすことで呼吸が楽になり、肺はもちろんですが心臓までが楽になるのです。言葉には出しませんが、頬が緩んで、とても喜んでいる様子がうかがえました。(患者さんが、無意識に大きな深呼吸を何度もするので、90~100近い脈拍が76ぐらいまで落ち着いてくるので楽になるのです)。
最後に腹部指圧です。右側の脇腹から中央部へと両手掌圧を軽くなでるような押圧を、上腹部側から下腹部側へと下がっていきます。今度は向こう側からこちら側への両手による軽い押圧です。(指圧を行うと言っても触れているか触れていないかわからないくらいかるく行うのです)。これを交互に何回か行なっていると、腹水の緩んでくるのが感じ取れます。(この時にも、患者さんは無意識に深呼吸を何度もするのです。するとそのたびに腹部の緊張が緩み、先ほどまでは眉間にしわを寄せてこわばった顔をしていたのが、顔もほころび、緩んでくるのが分かるのです)。
そこで今度はツボの部位を重点的に行ってみました。右側帯脈、章門、期門、日月、大横、天枢、肓兪など左右に在ります。(神闕は真ん中)又、任脈の巨闕、上脘、中脘、建里、下脘、水分、陰交、気海、石門、関元、中極、曲骨などですが、中脘や水分、又は陰交、気海、石門、関元などは、特に固さとむくみで内臓からの影響を受けて、機能が低下しているように感じ取れます。
又、水分のツボや臍の左右の肓兪、天枢、任脈の陰交、気海、石門、関元、中極などは深く差し込んで押圧すると、患者さんは呼吸を深く吸い込んでくれます。これを繰り返しているうちに患者さんはすやすやと寝息を立てて、深い眠りにつくのです。
家族はもちろんですが、若い医師は驚きを隠せないようです。
ヤ―佐々木先生驚きました。私たちは注射や薬で押さえつけようと考えてしまいますが、指圧がこんなに効果があるとは知りませんでした。ありがとうございます。患者さんも安心して休んでいるように感じます。と感想を述べてくれました。・・・
(緩和指圧は、出来るのです。・・・ただ、すべてうまくいくかはかはわかりません)。
因みに、この時は4~5回伺ったと思いますが、治療代はもちろんですが、往復のタクシー代(当時6~7000円くらいかかりました)が、私の研究心のためと思って一切いただきませんでした。私は、将来に向けて素晴らしい経験をさせていただいたのです。
その後2~3週間して亡くなられたと聞き、葬儀が終わって、お嬢様がわざわざ感謝のご挨拶に来てくれました。・・・ご冥福を祈ります・・・
このような経験があるからこそ、どんな症状の患者さんでもうろたえることなく向かい合えるのです。
「胃がん末期」患者さん女性82歳です。(中野にある老人病院です)
患者さんの家族の知り合いの指圧師さんから紹介です。
知り合いの人ですが、末期の胃がんの上、腹水で苦しんでいます。助けてくださいと言われて病院へ行きました。表情はとても優しそうな感じなので、あまり苦しそうには見えませんでした。ところがお腹に触れてみましたら、それは・それは大変、良くこの状態で我慢できているものだと驚きました。【腹部は隙間の無いほどの腹水でパン・パンだからです】
子供さん達には、あまり苦しみを見せないようにしているのだろうとも思いました。
触れているようで触れていないような感覚で、心窩部から腹部全体に触診してみますと、心窩部辺りから(特に胃部)、腹部全体にがん細胞が、ごつごつとぎっしりと詰まっている感じが手指に感じ取れます。(それを保護するかのように腹水が覆っているのです。)
腹部脇腹側から、触れているようで触れていないような感覚の触診及び治療、でも治療とは名ばかりで、腹水を何とか吸収、又は、散らすことが出来ればとの思いで行っているのです。こちら側、又は、向こう側と、行っているうちに、だんだん腹部の緊張(防衛反応)が緩みだして来たら、患者さんはすやすやと寝息を立てて熟睡したのです。
見ていた子供さんや家族の方々は、どうしたのだろう、気持ちよさそうに寝始めたねと、ささやき始めました。
それでも私は、腹部全体に触診指圧を続けていたのです。2~30分位立ったころだろうか、患者さんは急に目を覚まし、水をくださいと言い始めたのです。
私は持ってきた、クマザサエキスを五分ぐらいに水で薄めて与えたのです。
患者さんはちびちびと、おいしそうに飲み干したのです。・・・その後もう少しくださいというのです。又、湯飲み茶わんで、クマザサを五分に水で薄めて同じように与えました。
あー、生き返ったと言って、また患者さんはすやすや寝たのです。
(今までは水を飲むことも、あまりこのようなことはなかったようです。)
その後手足を軽めに指圧をしていると、少しは動いたりするものの又、寝てしまいました。
手足の指圧が終わり、又、20~30分ぐらい腹部の手掌圧を繰り返し行ったところ、腹部の緊張感、或は腹水などが大分緩和されてきたのです。すると、これが「がん細胞」か、と思われる塊が手に感じとれました。それでも静かに手当てをしていると、患者さんは呼吸が楽になってきたのでしょう、大きく息を吸って吐き、目を覚ましたので、どうですかと、問いただしてみました。
何か今までは、お腹や胸辺りが苦しくても我慢をしていたのですが、今は、身体が金縛りから解放された感じで、気分もすっきりし、お腹もすいた感じがします。ありがとうございます!と感謝を忘れません。
又、クマザサ入りの水を1~2杯飲んで、あー生き返った感じがすると発したのです。
この時も、治療代は原より、交通費や持参したクマザサエキス代金18000円も、お見舞いとして差し上げたのです。
子供さんたちや家族も感謝しきれないという感じで、お礼を述べております。
このように緩和指圧を行えるよう、普段から心掛けて行っていることで、後で大変役に立つものです。患者さんに感謝のお言葉をいただいた瞬間は、この仕事を行っていて良かったと感じる瞬間です。(このような重篤の患者さんを指圧した後は、普通は大変疲れるものですが、心も体もすがすがしく、晴れ晴れした感じがするものです。)
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